TL;DR

  • こういう有名なエッセイ集は幾つかあるけど、有名なだけあって面白いと感じる部分がある。
  • エッセイなので体系立てられていないので、人によってはつまらないと思う部分があると思う。20年以上前の本なので、色々と古くさいと感じたり、より適切な例があると思うが、それでもそのテーマ自体は他の人が何度もリライトされているとおり、重要な問い・メッセージだろう。
    • 例えば現在と比べてどうしてGoやKotlin, Rustなどが流行っているのだろうと問いを立ててみると、エッセイの深みが分かると思う。

感想

大抵の短編集を理解しようと試みるときは、表題作を読むのが良いが、個人的にはこの本に関しては『ものつくりのセンス』が一番良いのではないかと思う。

良いものを作りたいという「ハッカー」の資質はエンジニアは誰もが持っていると思う(少なくともエンジニアは自分の作ったものに対して拘りを持つことは大切だと考えている)。だが、その良いものを作る方法や方針を的確に伝えられ、決められる人はそんなにいない。

主観的だと思われているセンスをいかに言語化し知恵として体系化できるか、それがこのエッセイの主題だが、このテーマはこの本全体にも通底する考えだと考えるべきだろう。

Yahoo!に売却し、Yコンビネータを創立したポール・グレアムは起業家としての一面もあり、『富の創りかた』や『普通のやつらの上を行け』ではその方面を語っているし、片や『素晴らしきハッカー』などエンジニアとしての成功・成長の仕方も議論している。

こうした議論は今からするより良い話題や議論の展開の仕方があると感じるが、『情熱プログラマー』『達人プログラマー』『SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル』に代表されるノウハウ集に焼き直されており、多大な影響を与えた本だと言える。

結論

おすすめ度 ☆3

エンジニアとしての成長や方針に悩みがあるときに読むと良いと言える一冊。

人を選ぶだろうが、しかし伝えたいメッセージは全てシンプルであり、そこに至るまでの語りはできる限り読んでいる人に納得して貰うように書かれている。

古いと感じる部分もあるが、それでも色褪せないテーマがまとめられている珠玉のエッセイ集ではあると思う。